高校生クイズの問題作家は、毎週10問の○×クイズを作るというノルマが課せられています。○×クイズを作ることは非常に労力がかかるため、問題作家は自分なりの手順を決めて問題を作っていることが多いようです。
「技術」とは、そのような問題製作の手順に注目して答えを導きだす考え方です。ここでは、3つの重要な考え方を紹介します。
次の問題を見てみましょう。
例1: どんな状況の下でうちわを使って温度計をあおいでも、目盛りは絶対に下がらない。
(第28回四国岡山 3問目)
この問題を見たとき、何か気づく点はありませんか?大きな冷凍庫の中から暑い部屋に向けてうちわをあおいでも温度計は変わらないのか?という疑問が浮かび上がるはずです。
問題作家には週10問というノルマがありますので、苦し紛れに問題を作ることがしばしばあります。そして問題を選ぶ人も問題文に無理があることに気づかないまま出題する例もありえます。
このように、想像力を働かせ、問題文から矛盾を見つけだすことで、思わぬ形で答えを予測できることがあります。
ここでは、○×クイズの問題製作過程に注目して答えを導き出す考え方を紹介します。
次の問題を見てみましょう。
例2:ラッコは流されないようにこんぶを体に巻き付かせるが、つかまるところがないときは、互いの手をつかんでささえあう。
(第28回関東 5問目)
例3: キリスト教の祈りの言葉「アーメン」は、真実という意味である。
(第28回北海道 4問目)
問題製作過程で解ける○×クイズには、「事実先行型」と「でっちあげ型(アイディア先行型)」という2つの問題形式があります。「事実先行型」とは、○×クイズにできそうな雑学などを見つけて、それをもとに問題を作る方法。「でっちあげ型」とは、まず問題文のアイディアが先にあって、そのあとに答えを探して解説を作る方法のことです。
例題が事実先行型か、でっちあげ型かを見抜くためには、以下の3つの基準を使って問題を見ます。
・言葉を聞いてすぐに意味が理解できる
・○にしたときの意味と頭の中のイメージが整合している。
・その事実を全く聞いたことがない。
この3つの基準全てにあてはまっている場合はでっちあげ型。逆に、問題文を聞いて、自分ならこんな問題を作るというイメージと一致しないときは事実先行型だと考えるとよいでしょう。
そこで例2、3を見てみましょう。
例2の場合、「ラッコが流されないようにする行動」として「互いの手をつかんでささえあう」というイメージは、知っている人以外は絶対に湧いてこないと思います。ということは、まず「ラッコは流されないように互いに手をつかんでささえあう」という事実を見て問題を作ったので○だろう。と答えを推測することができるのです。
例3の場合、「アーメン」と聞いて、「真実」という意味でもしっくりくるかと思います。ということは、「アーメン=真実」という問題作家のアイディアからスタートし、そのあと答えを調べたと推測できますので、答えは×になります。
補足になりますが、高校生クイズの○×クイズに精通している人が「これはいい問題だ」と言う場合、ほとんどは、「アイディアをもとに問題を作り始めたのに、事実も同じだった」というパターンであることが多いようです。例えば、「バナナには、バカなという意味もある」(高校生クイズ史上最強の指南書より 正解○)という問題を高校生クイズ製作者が絶賛していましたが、このような問題を聞いたときのイメージがそのまま正解になるパターンこそが、高校生クイズでの○×問題の理想型なのです。作るのは非常に難しいですが、問題のメッセージ性もその分だけ非常に強くなります。
問題作家は週10問の○×クイズを作っていることは前に述べました。答えを調べる時間や確実に正解と言い切れるな問題を作りたいのに、時間がないために労力をかけられないというのが実際の問題製作現場なのです。
その「問題を作る労力」に着目した解き方がこれから紹介する「裏取り可否判定法」です。
例4:世界の都市の名前には、「マール」もあれば「バーツ」もある。
(第21回中国 2問目 正解○)
例5:「どいつもこいつも」といいますが、ドイツには、「コイツ」という都市がある。
(第25回関東 7問目 正解×)
なぜ例4では○になり、例5では×になるのでしょうか?
例4の場合、まず世界中の都市名を全て探すことは難しいことは推測できると思います。あらゆる国の言葉を調べないといけない、どこからが都市か定義されていない国があるかもしれない。という面があるので、バーツという都市がないことを証明することはほぼ不可能なのです。つまり、マール、バーツという都市があるから、この問題が作られた=正解は○。ということになるわけです。
例5の場合はどうでしょうか。「ドイツ」の「都市」に対象を限定しています。この問題の場合、ドイツ語が分かれば、すべての都市の名前を調べるにはそこまで労力もかからないでしょう。しかも、「市町村」や「村」ではなく都市に絞っている。ということは、コイツという都市が見つからなかったけど、市町村全部まで探す時間はない。という問題製作者の裏側を読み取ることができます。よって、この問題では正解は×だと考えられるのです。
なお、この裏取り可否判定法は○×を解き慣れないうちはかなり慎重に使う必要があります。裏を取れないと思っていても、実は裏を取れるということがよくあるからです。例えば次の問題を見てみましょう。
静岡と山梨には194の高校がありますが、すべての高校の校歌をみてみると、「富士」や「富士の山」を使った高校はあるが、「富士山」という言葉そのものを使っている学校は1つもない。
(第27回富士山 1問目)
この問題の場合、すべての校歌を調べることは不可能だと勘違いする人がいるようですが、調べる必要があるのはたかだか194校の校歌だけなので、調べようと思えば1、2日で調べることが可能な問題です。
ここまで○×クイズを解くときの基本的な考え方を身に付けてきました。次は、実際の会場でどのように解くのか、○×クイズのルールをまじえながら解説します。